家電製品の選び方と買い方

電子レンジに金属を入れてはいけない理由

最終更新日 2018年10月19日

電子レンジの中に、金属を入れてはいけない

電子レンジの中に、金属を入れてはいけない事はよく知られている事ですが、一体なぜなのでしょうか。

絶対に真似をしてはいけない事ですが、金属で作られた食器等を入れて電子レンジのスイッチを入れると、火花が出てくる事があります。これを火花放電と呼び、電子レンジの中に入れた金属から、火花がバチバチと出てくるシーンを見たことがある方もいるかと思います。(見た事がない方は、YouTube 等の動画共有サイトで探して見ると良いでしょう。)

このように、電子レンジに金属を入れて使うと、火花が生じ、周囲の食品などに引火し危険です。また、後に説明しますが、電子レンジに金属を入れて使うと、電子レンジの部品にダメージを与え、故障や寿命が短くなる原因にもなります。

電子レンジは、水分子に狙いを絞って加熱する

電子レンジに金属を入れてはいけない理由を理解するためには、まずは電子レンジが食品を加熱する仕組みを知る必要があります。電子レンジの簡単な仕組みを説明すると、電子レンジは、高周波の電磁波を利用して、食品を加熱します。

この高周波の電磁波は、食品に含まれる水分子に対して熱振動を起こさせやすい周波数を持っており、電子レンジは水分子に狙いを定めて加熱します。物が熱を持つという事は、物に含まれている原子や分子が激しく振動しているという事ですから、食品に含まれる水分を振動させて熱を発生させているというわけです。つまり、水分を含まない食品は、加熱されない事になりますが、実際は、水分子以外も、加熱される分子が存在するため、全く温まらないというわけではありません。

電磁波が金属中の電子に与える影響

電子レンジから発生する電磁波によって、水が加熱されるわけですが、では金属の場合はどうなのでしょうか。実は、金属は電子レンジから出る周波数によって、加熱されにくいのですが、金属の中に存在する電子は別です。電子は、電子レンジから出る電磁波を浴びると、電磁波からエネルギーを吸収し、非常に速く動き出します。特にこの現象は金属表面で起きます。

よって、電磁波によって活発に運動を始めた電子は、金属表面部分に存在する電子だけであり、また金属表面の電子が活発に動き回る事によって、電磁波を反射するようになります。反射された電磁波は、電子レンジの内部にある、電磁波発生装置に行きやすくなり、故障や部品を傷める原因になります。これが、電子レンジに金属を入れてはいけない理由の一つです。

金属から火花が出る理由

電子レンジから発生する電磁波によって、金属中に存在する電子が活発に動き回る事まではわかりましたが、では電子レンジの中に入れた金属から火花が出る原因は何でしょうか。火花が発生したという事は、電子が飛び出てきたという事ですが、これは、電磁波によって活発に動き回る電子により、金属の間に大きな電位差が生じる事によって発生します。

電位差が発生しているという事は、金属内部に存在する電子分布にムラがあるという事です。この電子分布のムラは、電子を活発に動かさないと実現しませんが、その電子を動かす役割を担うのが電子レンジから発生する電磁波です。また、電子分布は、主に金属の形状により決まります。よって、金属を入れたからといって、必ずしも火花が生じるわけではありません。

特に、金属自体に対して表面部分が多く、複雑な形状をした金属は、火花が出やすく燃えやすいです。例えば、スチールウールや、くしゃくしゃになったアルミホイルに当てはまります。また、金属を使った食器は、電子レンジから発生する電磁波によって、電位差が生じやすい形状になっていますので、金属が使われている食器類は、どれも電子レンジに入れると危険と認識しておく必要があります。

以上を踏まえると、電子レンジに金属を入れてはいけない理由は大きく分けて二つあり、その一つは、金属に反射された電磁波が、電子レンジの部品にダメージを与えてしまう事と、金属から発生した火花によって食品などに引火し、火災の原因になり得る事です。